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不動産の相続
公開日:2019/04/12 更新日:2022/06/17
相続登記をして相続した不動産を守りましょう
不動産を相続する際、「相続登記」をするかどうかが話題になることがあります。相続登記とは一体どんなものなのでしょうか。また相続登記をせずに放置していると、どういったことが起きるのでしょうか。相続登記の必要性について調べてみました。
相続登記とはどんなもの?
【相続登記】とは、いったいどんなものなのでしょうか。相続が身近な問題にならなければ、耳慣れない言葉ですが、不動産相続を行う際は重要な役割を果たすものなのです。
相続登記とは
【相続登記】とは、不動産を相続する際、名義をもとの持ち主から相続人へと変更することです。
登記とは公開された帳簿にさまざまな事柄を記載することです。社会に土地などの持ち主や権利の関係などを公示します。
不動産の登記は、相続する土地を管轄する法務局で行います。また登録免許税などの費用もかかります。
登記は不動産取引の安全を守るために行う手続き
不動産を相続するにあたり、何のために登記をするのでしょうか。実は、登記をすることは法律で定められている義務ではありません。
登記は、しなくても法的に罰せられることはありません。罰金を取られたり、追徴課税があったりするわけではないのです。
それならば、なぜ登記をするのでしょうか。不動産は、非常に価値あるものです。財産として相続する人は多く、相続財産の約半分を占めると言われています。
しかし、不動産の中でも「土地」は、地面に線を引いてあるわけでもありませんし、名前を書いておけるわけでもありません。
住宅地で塀が設けられていれば「私の家の土地はこの塀の内側だ」と分かりますが、家と家との境界に何もない場合、意外と土地の境界線はわからないものです。
非常に高価で、しかも境界線がわかりにくい「土地」は、取引が難しい財産といえます。そこで【登記】という形で、土地の所有者を明らかにする必要があるのです。
もしも登記システムがなかったら
もし所有者を明らかにするシステムがなかったり、所有者を知ることが非常に難しいシステムだったりした場合はどうでしょうか。
本当の持ち主が知らない間に、関係のない第三者が所有権を主張し、勝手に売り払って、そのお金を懐に入れてしまうかもしれません。
所有者が後になって気づき「この土地は私のものだ」と主張したとしても、登記のような証明がなければ、所有権を主張できませんよね。
そこで登記の必要があるのです。登記は一般に公開される帳簿なので、誰でもその土地の面積や持ち主、借りている人などが分かるようになっています。
登記をするということは、土地の所有権を守り、不動産取引の安全を守るということにつながるのです。
相続登記は誰が行うの?
相続登記は義務ではありません。また、相続をすれば自動的に登記簿の名義を変更してくれるわけでもありません。
相続登記は、不動産の相続が決定した相続人本人が、名義の変更手続きを行わなければなりません。
相続登記の方法
相続登記は、先ほどもご紹介したように「相続する土地を管轄する法務局」に出向いて行います。それではどんな手続きが必要なのでしょうか。
相続登記の手続き
法務局に出向いたら、相続登記を行いに来た旨を伝えます。そこで、必要書類を提出します。
相続登記に必要な書類
・遺言書
・遺産分割協議書
・被相続人(故人)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
・故人の住民票除票
・不動産を相続する本人の住民票
・印鑑登録証明書
・固定資産評価証明書
・相続人全員の戸籍謄本
その他に、【登録免許税】という税金を、費用として支払う必要があります。費用は収入印紙で支払うことになっています。
相続登記のタイミング (小規模宅地等の特例適用)
相続登記にはタイミングがあります。早すぎても、遅すぎても良くありません。どんなタイミングで相続登記を行えば良いのかチェックしてみましょう。
不動産相続に大きく関わる【小規模宅地等の特例】
不動産相続には、【小規模宅地等の特例】という課税に関する特例が存在します。
これは、亡くなった故人の自宅の敷地を、一定の基準を満たした親族が相続する際に適用される制度となります。適用範囲や条件などの詳しい内容は、こちらの記事をご覧下さい。
この特例は、相続が実際に行われないと受けることができません。そのため、相続人全員で話し合いを行い、遺産分割協議が整って、自分の取り分の不動産が確定してからでなければ、登記をしないことが基本です>。
※居住用以外にも小規模宅地等の特例を受けられるケースがあります。
・事業用…400㎡80%減
・貸付用…200㎡50%減
不動産登記には【相続税10か月】の期限は関係しない
本来、相続税の申告期限は、被相続人(故人)が死亡した日、相続が発生した日から10か月以内、と決まっています。
しかし不動産登記は、相続税申告期限とは関係しません。10か月以内に行わなければならないものではないのです。
10か月以内に遺産分割協議が整い、相続税の申告が終了すれば、先ほどご紹介した小規模宅地等の特例も受けることができます。
遺産分割協議がきちんとまとまっていないにも関わらず、登記を済ませることは危険です。なぜなら、一度登記を行ってしまうと、内容を訂正することは難しいからです。
登記は遺産分割協議がまとまり遺産分割協議書を作成してから
一度行った登記は取り消したり、内容を訂正したりすることはできません。そのため、登記は慎重に行うことが求められます。
【登記を早まって失敗してしまった例】
本来なら小規模宅地等の特例を受けることができる親族がいたのに、小規模宅地等の特例を親族の誰も知らず、税理士への相談も行わないまま相続を決めました。
結果的に、小規模宅地等の特例を受けられない、持ち家に住んでいて被相続人とは別居していた親族が相続して、登記してしまいました。
そのため小規模宅地等の特例を受けることができず、80%の課税価格減額を受けることができなかったため、多額の相続税を支払わなければならなくなりました。
のちに小規模宅地等の特例を知り、遺産分割協議のやり直しと相続登記の訂正を申し出ましたが、他の相続人達の同意も得られず、登記の訂正もかないません。
上記の例のように、「この特例を知っていれば、相続人Aではなく相続人Bが不動産を相続したのに」といったケースは、実は少なくないのです。
最初から相続に関して税理士に相談していれば、防げた失敗と言えます。
そのため、相続登記は慌てず、遺産分割協議を慎重に行い、遺産分割協議書を作成して、全員が納得した上で行いましょう。
相続登記に期限はない!でもできるだけ遅くならないように
相続登記は「次の相続が発生してしまう前に終わらせておく」ことが望ましいでしょう。相続登記は、いつまでにと決まっているわけではありません。
遺産分割協議をまとめて相続税を申告することは、相続が発生してから10か月以内に行う必要があります。
10か月以内の期限に遅れると、配偶者税額軽減の特例や、小規模宅地等の特例を受けることができなくなってしまいます。
相続登記はこの例に当てはまらない、ということは先ほどご紹介しました。慌ててよく話し合わないまま、登記をしてしまう危険性も考慮しなければなりません。
しかし相続登記を放棄したままにしておいた場合、次の相続が発生してしまう可能性があります。二次相続、三次相続と続き、相続人が数十人になってしまうことも実際あるのです。
高齢の両親のうち、父が亡くなり母がそのまま家に住み続けたとしましょう。形の上では相続されたように見えますが、母が子ども達と遺産分割協議を行わず、登記もしなければ相続したことにはなりません。
そのうち相談しなくちゃね、と話しているうちに、父の死後数か月も経たずして母も他界してしまったとしましょう。そうなると、父の財産は、母を飛ばして子ども達に相続されます。
その際、子どもが複数人数いれば分割協議を行うことができ、財産も折半することで相続税の負担も減らすことが可能です。
しかし子どもが1人しかいない場合は、父の財産をそっくりそのまま子ども1人が相続することになり、相続税の負担が重いものになる可能性があります。
もし母の存命中に遺産分割協議を行って、相続を行っていれば、母は小規模宅地等の特例を受けることができますし、子どもの相続負担も半分になります。
人生はいつ何が起きるか分からないものではありますが、もし相続人の中に高齢者がいる場合などは、早めに話をまとめた方が安心です。
不動産登記の費用
不動産登記には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。気になる費用について調べてみましょう。
不動産登記の費用①登録免許税
不動産登記には、登録免許税という費用がかかります。これは一律で決まっているものではなく、相続する不動産の価値によって変動します。
不動産登記の登録免許税
固定資産税評価額×0.4%
この費用は、現金ではなく収入印紙によって支払うことになっています。収入印紙は手続きを行う法務局のほか、郵便局やコンビニなどで購入可能です。
不動産登記の費用②司法書士代
不動産登記は自分で書類を揃えて自分で行うことも可能ですが、複雑なので途中で挫折してしまう人も多くいます。
また高齢の方など、自分で何度も法務局に赴くことが難しい方もいますね。そんな時は、司法書士にお願いすると、手続きを代行してくれます。
費用はだいたい7~10万円ほどと言われています。登記の失敗で大きな額の税金を損してしまう可能性を考えると、司法書士にお願いした方が安心というケースも多いのではないでしょうか。
相続登記を行わなかった場合のリスク
相続登記を行わなかった場合、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。相続登記は不動産を守るために必要なもの、とご紹介しましたが、行わない場合に起きるリスクをご紹介します。
相続登記を行っていない土地は売却できない
相続登記を行わずに放置しておいた場合、その土地は売却することができません。相続した土地の使い道がない場合、売却してお金に換えることを考える人も多いですよね。
しかし、相続登記をして、土地の所有者が変わったことをきちんと開示していない土地は、売却することができないのです。
急いで土地を売却したい場合など、相続登記の手続きから行わなければならず、非常に困るケースもあります。
相続登記を放置している間に相続が何度か行われた
相続登記を放置している間に、何度か相続が行われると、その間の登記がストップしてしまいます。それでも登記は義務ではないので、特に罰則されることはありません。
そのまま気づかずにいると、何代にもわたって登記が放置された状態が続きます。もし土地を売却したい、となった場合、放置されていた分の登記をさかのぼって行わなければなりません。
公的書類の保存期間が過ぎてしまい、登記のさかのぼりが非常に大変に
相続登記がずっと放置されていた場合、公的書類の保存期間が過ぎてしまったり、古くなりすぎてしまい、登記のさかのぼりが非常に大変になったり、困難になることもあります。
相続人が同じ地域に住んでいれば良いのですが、何代も続く間に遠方の親族が混ざっていたりすることもあります。
ほぼ行き来のない、親戚づきあいも途絶えた遠方の親族の子孫に仔細を話して書類を揃えることは、ほとんど不可能に近いでしょう。
共有名義による登記
登記は、一人の名前で行う単独名義と、複数人数で行う共有登記があります。つまり、不動産相続を共有にした場合、登記も共有で行うことになります。
共有相続をして共有登記をすると、今は簡単ですが後の世代になって非常に面倒な手続きが必要になります。
また相続人の誰かが不動産を売りたい、という場合、共有名義を解消する時に費用がかかります。
滅失登記
もし空き家を相続した場合、住む予定がないと、空き家はどんどん荒れて、しまいには危険な廃墟になってしまいます。
廃墟になってしまうと、住居が建っている土地の固定資産税が軽減されるという特例が適用されなくなるため、更地と変わらない税金を支払う必要が出てきます。
また廃墟は害虫が発生したり、雑草が生い茂ったり、ゴミを投棄されたりして近隣住民に多大な迷惑をかける可能性もあります。
そのため、空き家が廃墟になってしまう前に解体して、売却するという方法をとることもありますよね。
その際、家を解体した場合には、建物の滅失登記を行わなければなりません。滅失登記をしなければ、土地を売却できないだけでなく、固定資産税もかかり続けます。
相続登記は自分の財産・取引・子孫の相続も守ってくれます
相続登記は法律で決められたものではないので、つい放置してしまいがちです。しかし、登記は形があるけれど境界線があいまいな「不動産」という宝物に自分の名前を記す、とても大切な手続きです。
その手続きが、自分の不動産を守るだけでなく、今後行われるであろう取引や、子孫への相続の簡素化も守ってくれます。忘れずに、できるだけ次の相続が発生する前に行うようにしましょう。