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生前対策、生前贈与
公開日:2015/05/11 更新日:2022/09/01
相続税対策に不動産投資が有効な理由とは?メリット・デメリットと注意点も解説
遺された家族に資産を相続する場合、多額の相続税が重くのしかかってくることをご存じでしょうか。日本では資産の評価額に応じて税金を課していますが、資産の形状を変えることで相続税額を減らすことが可能です。
そのなかでも、資産価値を減らすことなく相続税対策が行えるのが不動産投資です。この記事では、なぜ不動産投資が相続税対策になるのか、その理由とメリット・デメリットなど解説しています。
不動産投資が相続税対策になる3つの理由とメリット
不動産投資は相続税対策として注目されています。その理由とメリットについて見ていきましょう。
現預金を不動産に換えると相続税評価額が下がる
現預金を相続した場合は額面通りの評価額となります。しかし、現預金を不動産に換えることで相続税評価額は低くなり、土地は路線価方式により約8割、建物は固定資産税評価額により時価のおよそ6割で評価されます。
例えば5,000万円の土地と5,000万円の建物の相続を行う場合、土地の価値は路線価方式により時価の8割程度で評価され、約4,000万円で評価されます。建物は固定資産税評価額により時価の6割程度、3,000万円で評価されます。つまり、現預金では1億円の評価だったものが、土地4,000万円+建物3,000万円=7,000万円になり、課税評価額を3,000万円も評価を圧縮することができます。
また、不動産を人に賃貸していると、自由に自身で売却したり使用したりできないという理由でさらに土地の評価は2割、建物の評価は3割下がります。
つまり「土地4,000万円×0.8=3,200万円」「建物3,000万円×0.7=2,100万円」となり、合計評価額は5,300万円となります。1億円の現預金の評価額より約半分も評価を圧縮することができるのです。
このように、不動産は事業用の宅地としての特例があります。これを小規模宅地等の特例といいます。小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに貸付事業を行い、継続して事業を行っていなければならないなど一定の条件を満たす必要がありますが、相続税対策として効果があるといえるでしょう。
インフレに対応できる
現預金は、インフレに対応できず目減りしてしまう可能性があります。例えば、現在100万円で購入できていたものでも、将来は150万円支払わなければ買えないような状況になる可能性があります。
一方、日本の地価は首都圏を中心に上昇傾向にあります。特に東京のマンションの価格は年々緩やかな上昇傾向が続いており、特に高級タワーマンションは手厚い防犯面での安心感や眺望の良さなどから人気があります。また、物価と地価は連動する傾向にあるため、インフレに強いといえるでしょう。
残された家族の将来の生活が安定する
相続税対策とはいえ、不動産があることで残された家族にとって家賃収入が得られるのは大きな安心材料となり、将来の生活が安定することでしょう。不動産投資は入居者がゼロにならない限り家賃収入を生み続けます。
また、少子高齢化により将来は年金の原資不足が予想されています。子どもたちが年金を受け取る世代になったときには、安定して手厚い年金制度ではなくなっている可能性がありますが、そうした場合でも不動産投資は効果を発揮します。
不動産投資を相続税対策にするデメリットとリスク
不動産投資は相続税対策として課税額を減らせる可能性がありますが、いくつかのリスクやデメリットも存在します。
手続きが負担になる
現預金とは異なり、不動産を相続するには法務局の数々の手続きが必要です。その他にも、不動産の評価査定を依頼したり、相続人が複数いる場合は分割の方法を考慮するなどの手間もかかります。また、相続人によっては不動産による相続を希望していない場合があるでしょう。不動産を購入する前に、相続税について相続人となる家族とよく話し合うことが大切です。
物件によっては負債になる可能性がある
家族の将来のためを思い購入した物件も、場合によっては負債になってしまう可能性があります。買ってはみたものの需要の少ない地域の物件だった……、修繕費用がかさみ収益を圧迫している……など、物件選びを間違ってしまうと安定した収益を得るどころか負債になって赤字になってしまうことがあります。そうした事態を防ぐためにも、相続人にとってメリットとなるような物件を選ぶようにしましょう。
借り入れによるマイナス資産に注意
不動産を購入するために、多くの場合は資金の借り入れを利用するケースがあるでしょう。負債は相続税の計算においてマイナス資産となるため、相続税評価額の軽減効果を得ることができます。
しかし、相続税の負担が少なくなったとはいえ、借り入れは相続人に借金を背負わせることになるのです。不動産購入による負債は多額になるケースがほとんどのため、相続人は数十年にわたり借金を返済し続けなければなりません。相続税対策のために不動産を購入する際には借り入れによるマイナス資産に注意し、できるだけ相続人に負担のかからないように計画を立てておく必要があるといえます。
不動産投資で相続税対策をする際の注意点
相続税対策としての不動産投資のメリットやリスクについて解説してきましたが、相続税対策で失敗しないための注意点を3つお伝えしていきます。
流動性と利回りを考慮しなければならない
相続税対策とはいえ、不動産を保有している間の収益は得られるに越したことはありません。ある程度の利回りの高い物件を保有しなければ、相続人がその不動産を保有し続けるのが負担になるでしょう。
利回りとは、不動産の総額に対して得られる利益のことを指します。たとえば、1億円の物件の場合、年間の賃料の総額が800万円では利回りは8%です。この賃料総額の800万円から不動産を維持するための必要経費を支払わなければなりません。利回りの低い物件では、保有中に赤字になる可能性が高いといえます。
また、不動産の流動性が低ければ、将来売却する際に換金できないというケースが考えられます。駅から近い、都心であるなどを考慮し、売りたいと思ったときにすぐに売れる物件を購入しましょう。不動産は流動性と利回りがよければ、アパートや高層マンション、駐車場など種類は問いません。
遺産分割を考えないと相続が「争続」になりかねない
相続人が一人の場合は遺産分割への配慮は不要ですが、複数の相続人がいる場合は遺産分割を考慮しなければ相続人同士がもめる原因になってしまいます。
相続人にあらかじめ要望を聞いておいたり、複数の不動産を購入したり、不動産のほか現預金を遺すなどして、相続が「争続」にならないよう対策を講じましょう。
また、資産管理会社を設立して資産を会社に移転させ、相続人を役員にして株式を分けておけば、資産の分割が容易になり争いのリスクを軽減できるでしょう。ただし、資産管理会社設立には抑えておくべき点が複数あるため、不動産に詳しい税理士へ相談されることをおすすめします。
明らかな相続税対策は無効になる可能性がある
不動産投資による相続税対策は、それが明らかに相続税対策だと分かった場合は、無効になる可能性があります。税務署の判断によるため明確な線引きはありませんが、それが相続税対策であると文書にして残すのは避けましょう。
また、税務調査は相続税の申告から過去3年にさかのぼって行われます。税務調査が入った時点ですでに不動産を売却している場合は明らかな相続税対策と見なされ、これまで行ってきた相続税対策が無効になる可能性が高いといえます。もし物件を売却する場合は相続税申告から3年以上経ってから行いましょう。
まとめ
不動産投資は不況やインフレに強く、相続税対策として有効である一方で、物件選びによる失敗のリスクやデメリットも存在します。少しでも多くの資産を家族に遺すためにも、相続対策に強い税理士に相談してみましょう。