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相続税申告
公開日:2016/06/06 更新日:2023/03/03
相続税の基礎控除とは?計算方法や贈与を無駄にしない対策を紹介
相続税の基礎控除は、相続税の申告や納税額に関わってくる重要なポイントです。正しく理解していないと、必要な申告を怠ってしまう原因になりえます。
この記事では、相続税の基礎控除の概要と基礎控除額の求め方、併せて知っておきたい法定相続人の計算方法などを解説しています。相続を予定している方や相続が発生した方は参考にしてください。
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除は、故人の遺産の総額(課税価格の合計額)から差し引ける一定金額のことです。各相続人が相続などで取得した財産の合計が、この金額を超えると相続税の課税対象になります。相続税の基礎控除は、相続税申告手続きや相続税納税の必要性を判断する重要な要素です。相続税には、なぜ基礎控除が設けられているのでしょうか。
相続税に基礎控除が設けられている理由は、この制度が存在していないと被相続人の遺産を相続したすべての方が相続税を申告して納税しなければならないからです。すべての方を対象にすると、納税額を用意できず自宅を売却せざるを得ないなどの状態に追い込まれる方が多く発生すると予想されます。こうしたトラブルを防ぐため、「非課税枠」にあたる基礎控除を設けているのです。
相続税の基礎控除額は、平成27年の相続税法改正で減額されました※1。減額の背景として、バブル経済崩壊による地価の下落などがあげられます。基礎控除額が小さくなったことで、相続税法改正前よりも多くの方が課税対象になりました。具体的には、東京都23区内にある土地付き一戸建て不動産を相続すると、ほとんどの方が相続税の課税対象になると考えられています。基礎控除額が減額されたことで、相続税は多くの方に関わりのある問題になりました。
※1 国税庁:相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)
相続税の基礎控除に関する税制改正
平成27年の相続税法改正における主な改正点は以下の4つです。
- 遺産にかかる基礎控除
- 相続税の税率
- 税額控除
- 小規模宅地の特例
それぞれの改正点を解説します。
【改正点1】基礎控除額の引き下げ
相続税の基礎控除額が大きく引き下げられました。改正前の基礎控除額は、以下の計算式で求めていました。
【基礎控除額の計算方法】
▼改正前(平成26年以前)
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
↓
▼改正後(平成27年以降)
【基礎控除額の計算方法】
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
ポイントは、5,000万円が3,000万円に引き下げられた点と1,000万円が600万円に引き下げられた点といえるでしょう。例えば、法定相続人の数が2人であれば、改正前の基礎控除額は7,000万円、改正後の基礎控除額は4,200万円です(詳しい計算方法は次の章で説明します)。
課税価格の合計額が5,000万円だと仮定すると、平成26年12月31日までに相続が発生した場合は相続税の課税対象外、平成27年1月1日以降に相続が発生した場合は相続税の課税対象になります。遺産にかかる基礎控除額の改正は、多くの方たちに関わる身近な問題といえるでしょう。
【改正点2】相続税の税率が変更
平成27年の相続税法改正で、相続税率も引き上げられました。ただし、全ての方に影響する改正ではありません。対象となるのは、各法定相続人の取得金額が2億円を超える場合です。相続税法改正前と相続税法改正後の税率を紹介します。
各法定相続人の所得金額 | 改正前(平成26年以前)の税率 | 改正後(平成27年以降)の税率 |
1,000万円以下 | 10% | 10% |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 15% |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 20% |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 30% |
1億円超2億円以下 | 40% | 40% |
2億円超3億円以下 | 40% | 45% |
3億円超6億円以下 | 50% | 50% |
6億円超 | 50% | 55% |
2億円超3億円以下の税率が40%から45%、6億円超の税率が50%から55%に引き上げられています(1億円超2億円以下、3億円超6億円以下は改正前と同じ税率)。
ちなみに、相続税額は、各法定相続人の取得金額に税率を乗じ算出した金額から控除額を減じて求めます。
ここでいう各法定相続人の取得金額は、課税遺産総額(課税価格の合計額から基礎控除を減じて求めた金額)を各相続人が法定相続分で取得したと仮定して算出します。
【改正点3】未成年者控除・障害者控除が変更
平成27年の相続税法改正で、未成年者控除と障害者控除の控除額も引き上げられています。具体的には、以下の通りです。
【未成年者控除の控除額】
- 改正前:20歳まで1年につき6万円
- 改正後:20歳まで1年につき10万円
例えば相続人の年齢が17歳であれば、控除額は次のようになります。
(例)
【相続人が17歳の場合の控除額】
- 改正前:3×6万円=18万円
- 改正後:3×10万円=30万円
障害者控除の改正点は以下の通りです。
【障害者控除の控除額】
- 改正前:85歳まで1年につき6万円(特別障害者(※2)は12万円)
- 改正後:85歳まで1年につき10万円(特別障害者は20万円)
例えば相続人の年齢が65歳であれば、控除額は次のようになります。
(例)
【相続人が65歳の場合の控除額】
- 改正前:20×6万円=120万円
(特別障害者の場合:20×12万円=240万円)
- 改正後:20×10万円=200万円
(特別障害者の場合:20×20万円=400万円)
未成年者と障害者は押さえておきたい改正点です。
※2:特別障害者とは、障害等級が1級、2級、いつも病床にいて複雑な介護を受けなければならない等、重度の障害者の方
【改正点4】小規模宅地等の特例が変更
小規模宅地等の特例についても改正が行われています。主な改正点は次の通りです。
【居住用宅地等の限度面積】
- 改正前:240㎡
- 改正後:330㎡
【居住用・事業用の宅地等を選択する場合の適用可能面積】
- 改正前:合計400㎡
- 改正後:合計730㎡
※合計730㎡は貸付事業用宅地等について適用を受けない場合
小規模宅地等の特例については、小規模宅地等の特例とは?要件や減額例と注意点をわかりやすく解説で詳しく解説しています。
また、併せて押さえておきたい地積規模が大きな宅地の評価についても別の記事で解説しています。「広大地評価の廃止と「地積規模の大きな宅地」の新設について解説」も参考にしてください。
相続税基礎控除額の計算方法
相続税の基礎控除額は、申告の必要性などを判断するうえで重要なポイントになります。どのように計算すればよいのでしょうか。具体的な事例とともに解説します。
基礎控除額の計算式
平成27年1月1日以降に相続が発生した場合、基礎控除額は以下の計算式で求めます。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人は、民法で定められた相続人のことです。具体的には、配偶者と一定の血族(血族相続人)を指します。誰でも法定相続人になれるわけではありません。
法定相続人の数え方は?
法定相続人の範囲と順位は民法で以下のように決められています。
法定相続人の範囲 | 順位 |
配偶者 | 常に法定相続人になる |
子 | 第1順位 |
直系尊属 | 第2順位 |
兄弟姉妹 | 第3順位 |
法定相続人は、配偶者と最も順位の高い血族相続人で構成されます。ここで注意したいのが、正式な婚姻関係を求められるため、内縁の妻などは法定相続人に含まれないということです。被相続人に子がいる場合は配偶者と子、被相続人に子がいない場合は配偶者と父母などの直系尊属、被相続人に子、直系尊属がいない場合は配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になります。
以上からわかる通り、上の順位の血族相続人がいる場合、下の順位の血族相続人は法定相続人になれません。したがって、被相続人の配偶者がいない場合は、子のみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみが法定相続人になります。
例えば、被相続人に、配偶者・子2人・父母2人・兄弟姉妹3人がいる場合、法定相続人の数は3人です。配偶者と最も順位の高い子2人が法定相続人になります。同様に、法定相続人に、配偶者・父母1人・兄弟姉妹2人がいる場合、法定相続人の数は2人です。父母が存命のため、兄弟姉妹は法定相続人になれません。
法定相続人に関してもっと知りたい方は、以下のページで具体例なども踏まえてより詳しく解説していますので、こちらの記事もご覧ください。
また法定相続人の数え方は、ケースで異なることがあります。記事内の「相続税基礎控除で注意したいケース」も参考にしてください。
配偶者のみが相続する場合の計算
ここからは、具体的な事例をもとに相続税の基礎控除額を算出します。被相続人に、子・直系尊属・兄弟姉妹がいない場合、法定相続人は配偶者のみになります。したがって、基礎控除額は以下の計算式で求められます。
3,000万円+600万円×1人(配偶者)=3,600万円
法定相続人が配偶者だけであれば、相続税の基礎控除額は3,600万円です。3,600万円以下は、相続税の課税対象になりません。
配偶者と子ども3人が相続する場合の計算
配偶者と子ども3人が法定相続人の場合はどうなるのでしょうか。基礎控除の計算式は以下のようになります。
3,000万円+600万円×4人=5,400万円
以上の条件であれば、相続税の基礎控除額は5,400万円になります。5,400万円以下は、課税対象になりません。
相続財産の範囲と計算方法
相続税を計算するために欠かせないのが課税価格です。課税価格は、相続財産の範囲を理解しておかなければ求められません。相続財産の範囲は次の通りです。
プラスの財産
プラスの財産の例としては以下のものがあげられます。
- 現金・預貯金
- 株式・投資信託
- 美術品・骨董品
- 土地・建物・借地権
- 売掛金・貸付金
マイナスの財産
借金や負債などはマイナスの財産となります。例としては以下のようなものがあげられます。
- 借入金・買掛金・未払いの医療費
- 葬儀費用(通夜・告別式・火葬・納骨費用)
- 未払いの税金
生命保険は相続税の課税対象
被相続人が亡くなったことで受け取った財産をみなし相続財産といいます。代表例といえるのが生命保険の保険金です。みなし相続財産は、プラスの財産に含まれます。ただし、受け取ったすべての金額が課税対象になるわけではありません。以下の計算式で求めた金額は非課税になります。
生命保険金などの非課税限度額=500万円×法定相続人の数
例えば、死亡保険金が3,000万円で、法定相続人が配偶者と子ども2人であれば非課税限度額は1,500万円なので、残り1,500万円が課税対象です。
押さえておきたい非課税財産について
一部の財産は、相続税の課税対象にはなりません。代表例としてあげられるのが、生命保険金のうち一定額です。また、墓地や墓石、仏壇、仏具、なども非課税財産として適用が可能です。法要費用、花輪代などは、控除可能な葬儀費用として認められています。※2 ※3
相続財産の計算方法
相続財産は以下の計算式で求められます。
相続財産=プラスの財産-マイナスの財産
計算式自体は簡単ですが、各財産の評価方法は非常に複雑です。不動産・株式などの評価方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
相続税基礎控除で注意したいケース
相続税の基礎控除を計算するうえで注意したいポイントは以下の通りです。
相続放棄をした方がいる場合
法定相続人の中に相続放棄をした方がいる場合、基礎控除額の計算に用いる法定相続人の数は相続放棄がなかったものとして算出します。つまり、配偶者と子3人がいて子のうち1人が相続放棄をしている場合も、基礎控除の計算に用いる法定相続人の数は4人のままです。
ちなみに、相続放棄は、プラスの財産・マイナスの財産を含め被相続人の財産を全て承継しないことを指します。相続放棄を選択したい場合、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申し出なければなりません。より詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
代襲相続がある場合
本来ならば相続人になる方が、被相続人よりも前に亡くなった場合、その子に相続権が移転します。これを代襲相続といいます。相続が発生した段階で被相続人の子が亡くなっている場合は孫、孫も亡くなっている場合はひ孫が法定相続人になります。代襲相続とは区別されますが、相続人の父母が亡くなっている場合も同様です。
つまり、相続が発生した段階で被相続人の父母が亡くなっている場合は祖父母、祖父母も亡くなっている場合は曾祖父母が法定相続人になります。下の代、あるいは上の代へと引き継がれる点がポイントです。兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪が法定相続人になります。
ただし、甥・姪が亡くなっていても、下の代へと引き継がれることはありません。兄弟姉妹の代襲相続は1代限りです。代襲相続により法定相続人の数は増えることがあります。
養子がいる場合
養子がいるときも、法定相続人の数え方に注意が必要です。養子も実子と同じ第1順位になりますが、法定相続人に数えられる養子の数には限りがあります。具体的には、実子がいる場合は1名、実子がいない場合は2名までが、養子の人数の限度となっています。
例えば、被相続人に配偶者と実子2人、養子2人がいる場合の法定相続人は4人(配偶者1人・実子2人・養子1人)、被相続人に配偶者と養子3名がいる場合の法定相続人は3人(配偶者1名・養子2名)です。
ただし、実父母との親子関係を解消して養父母と親子関係を構築した特別養子、連れ子の養子、代襲相続人の養子は実子とみなされるため制限は受けません。
相続欠格や廃除の対象者がいる場合
相続欠格や相続廃除があった場合も気を付けたいケースとしてあげられます。相続欠格、相続廃除とは、どちらも著しい非行行為などで相続人の資格を失うことです。
例えば、子どもが親を殺した場合などは相続欠格になります。また相続廃除となるのは、被相続人に多額の借金を返済させたなどの非行がある場合です。
基礎控除額の計算に用いる法定相続人の数に、相続欠格や相続廃除になった人を含めることはできません。ただし、該当者に子がいる場合は、代襲相続によりその子が法定相続人になります。
遺言書で法定相続人以外が遺産を受け取る場合
遺言書で法定相続人以外の人が遺産を受け取っても、その人を法定相続人の数に含めることはできません。相続人と同等の権利義務を有する包括受遺者であっても同様です。
遺贈がある場合の注意点
相続人が、相続が開始する前の3年間に被相続人から贈与を受けている場合、当該贈与財産は相続財産に加算されます。これを生前贈与加算といいます。
生前贈与加算の対象者は、相続や遺贈で財産を取得した人です。遺贈とは、遺言で財産を相続人やそれ以外の人に引き継ぐことを指します。相続が開始する前の3年間に贈与を受けていても、相続や遺贈で財産を取得していなければ対象外となります。ちなみに、相続財産として加算される額は贈与時の価格です。
基礎控除を活用した暦年贈与
贈与税には110万円の基礎控除が設けられています。毎年、1月1日から12月31日までの贈与額が1人あたり110万円以下であれば、贈与税は基本的に課されません。この仕組みを活用した贈与の方法を暦年贈与といいます。
ポイントは、贈与税は贈与する側ではなく贈与される側に課税されることです。したがって、贈与額が1人あたり110万円以下であれば、複数人に贈与しても贈与税は課されません。ただし、「多額(相続税の課税対象3000万円以上になりうる)の相続を小分けにしている」と税務署が判断すると課税対象になることがあります。
詳細について知りたい方は【生前贈与の節税】生前に手を打てる節税方法を徹底チェックも合わせて参考にしてください。
相続税の基礎控除について理解を深めましょう
相続税の課税価格の合計から差し引ける一定額を基礎控除といいます。平成27年1月1日以降の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。法定相続人は、配偶者と最も順位の高い血族相続人です。
実際の相続では、代襲相続が発生するなど、さまざまなケースが考えられます。また、財産の評価方法も複雑です。相続税の申告が必要な方は、できるだけ早く専門家に相談しましょう。