お役立ちコラム

意外と知らない節税の注意点や税理士を選ぶポイントなど、税理士、税務に関する様々な豆知識をご紹介するお役立ちコラムです。

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M&A(税理士事務所)

公開日:2024/05/13 更新日:2024/05/13

【M&A事例】税理士法人が個人税理士事務所(3人規模)を買収した事例

税理士紹介エージェントでは、事業譲渡(売却・M&A)・事業継承のお手伝いをさせて頂いております。

今回、東京から神奈川にかけて複数の拠点を持つ中規模の税理士法人が、個人税理士事務所(売上規模3000万円未満、クライアントおよびスタッフ2名含む)を買収した事例を紹介します。

個人税理士事務所の所長が売却を検討した背景や売却の条件、無事M&Aが完了に至ったプロセスについて詳しくみていきましょう。

譲渡側の個人税理士事務所について

今回の譲渡側は東京23区内にある所長税理士+スタッフ2名の個人税理士事務所です。

後継者候補として育てていたスタッフは、業務歴15年の40代男性でクライアント対応を全て任せられていましたが、有資格者ではありません。

もう1人のスタッフは、業務歴2年の50代女性で、簡単な入力補助や来客対応など、所長のサポートがメインの業務です。

譲渡(売却)検討の背景

この事務所の所長税理士は、かねてより下記の2つのケースを考えていました。

  1. 事務所内で後継者になり得るスタッフ(未資格者)を育て、60歳を機に後継者に所長を譲り、ご自身は後継者(有資格者)のサポートや事務業務をメインにしていく
  2. もし事務所内からご自身以外の有資格者である後継者が出ない場合には、事務所の閉所および引退

所長税理士が50代後半になり、後継者が育たない中、インボイス制度および電子帳簿保存法の導入を迎えるにあたり、事務所を継続するか否かを判断するタイミングとなりました。

引き続き所長として業務を続けると、新制度導入後数年間は業務から離れることが難しくなります。このままでは以前より予定していたご自身の引退のタイミングを逃す可能性もあります。

またクライアントには安心して事業を継続してもらいたいですし、スタッフも安心して働ける場所を守ることを考えた結果、クライアントとスタッフの売却を選択しました。

譲受側の中規模税理士法人について

個人税理士事務所を譲受したのが、東京から神奈川に複数の拠点を持つ中規模の税理士法人です。23区内を中心に都内・埼玉・千葉のクライアントをサポートしています。

譲受(買収)検討の背景

これまでにもこの税理士法人は後継者が不在となった税理士事務所を買収した実績がありました。そのため、譲受後のサポート体制もイメージしやすく、譲受先の候補として早い段階から選定に至りました。

個人事業主から上場企業まで幅広く対応ができ、特に相続、不動産、医療に特化したスタッフを揃えており、クライアント対応はチームでサポートを行うなど組織化がされているため、譲渡後もスタッフの雇用継続が約束されていれば、クライアントの引き継ぎが可能であり前向きな検討に入りました。

譲渡側の優先条件

M&Aにあたり、譲渡側・譲受側から様々な条件がありますが、両者がどうしても譲れない条件を確認して進めていきます。

今回譲渡側は、所長より最重要項目として「クライアントおよびスタッフに心配を与えず引継ぎを行いたい」との希望があり、それを実現できる事務所と進めることになりました。

その他の条件として

①事務所のエリア

事務所のクライアントの8割は医療法人やクリニックであることから医療対応が可能であること、スタッフ2名が埼玉県から通勤していることもあり、現在の事務所所在地である賃貸オフィスを継続または、その周辺(スタッフの通勤可能範囲)の税理士事務所を条件としました。

②社労士業務の継続

他にも社労士事務所としての機能もあるため、クライアントの負担とならないよう、引き続き社労士業務が継続できることを条件としました。

なお、相談当初からスタッフへの告知時期は、動揺や退職を防ぐためにも、ある程度契約内容が固まった段階を予定しており、所長とエージェントで内密に進めて行くことになります。

それに対する譲受側の反応

抱えている拠点とクライアントの分布状況から、譲渡側の事務所所在地エリアへの拠点拡大を以前より視野に入れていました。クリニックや医療法人の実績が多数あり、クライアントの業種に不安材料はなく、規模感もマッチすることから前向きに動き出します。

キーマンとなる40代男性スタッフが、実務に精通し、クライアントとの信頼関係ができていることから雇用が継続であれば、スムーズに事業が承継できると判断しました。逆にこのスタッフが退職することにより、クライアントが離れる可能性があること、またクライアントのみの買収となった場合には、人的なリソース不足のため、満足のいくサービス提供ができないことから事業承継は難しいと判断していました。

譲渡金額は直近期の売上金額相当額をベースに

近年、EBITDA「営業利益+減価償却費」の4~6倍程度を譲渡金額として算出する場合もありますが、本件はシンプルに直近期の売上金額相当額をベースに合意となりました。

社労士契約も含まれるため、クライアントはこれまでと同様の社労士業務のサポートをうけられます。ただし、譲受側としてキーマンとなる40代男性スタッフの退職の可能性の懸念が大きかったため、別途取り決めを行いました。譲受側へ引き継がれると予定されているクライアントから発生する年間手数料総額(A)のうち、事業譲渡後1年半経過した時点で、引き続き契約を継続しクライアントから発生しうる年間手数料総額(B)を算出し、B÷A×100で算出される年間手数料維持率を算定し、100%未満の場合には譲渡金額の修正を行うことを契約内容に記載しています。

M&A/事業譲渡の流れ

個人事務所所長から売却のご相談を受けた後、当エージェントが譲受先候補を数社選定し、その数社と譲渡側がノンネームの状態のまま、テキストでの質疑応答で事前準備を整えた後、大枠の条件がマッチしたら面談の打ち合わせに進みました。

今回の場合、譲渡側と譲受側が契約締結まで大きく4ステップで完了となりました。

譲渡側・譲受側が契約締結まで直接話をする機会は合計4回でしたが、その間のやり取りは、エージェントが仲介し、メールや電話で双方の状況を尊重しながら相違等が生じないように丁寧に進め契約締結に至りました。

①初回のお顔合わせ

譲渡検討に至った経緯や所長の意向や希望を確認し、譲渡後の事業継続がお互いにイメージができるかが重要となります。

②譲渡側事務所への訪問

譲受側が事務所を見学し、物理的配置を含めた状況を確認し、稼働するにあたっての人員配置やシュミレーションができるかが重要となります。

③整理すべき条件のすり合わせ

オンラインでの打ち合わせとなり、譲渡に関する条件や具体的な方法について話します。

④契約書の読み合わせ

③での決定事項を元に契約書を作成し、譲渡金額の確認や譲渡契約締結日の最終確認をします。スタッフの雇用条件は、契約締結後に、譲渡側と譲受側で別途調整を行うことにしました。

譲渡後、「クライアントおよびスタッフに心配を与えず引継ぎを行うため」所長と譲受先との顧問契約(社労士業務のサポートの継続を含む)を締結しました。

これにより譲渡後1年間は、不安によるクライアントやスタッフの離脱を防ぎ、半年以降に少しずつ影響力を減らしていくよう、譲受側との連携を取りました。

また、譲受側は、キーマンとなる40代男性スタッフの継続が必須条件であることから、契約内容に譲渡日から1年半後の年間手数料維持率による譲渡金額の再計算を盛り込みました。更に将来的な懸念を解決し、取引の透明性を確保するために、キーマンとの面談後に懸念が生じた場合、その懸念が解消できない場合には契約破棄を行うことを契約書に明記しました。

譲渡契約日以降、無事に譲受側と40代男性スタッフとの面談を開催し、今後もこの40代男性スタッフの継続が決定し、譲渡日を迎えることができました。

まとめ

事務所の後継者がおらず、クライアントや事務所スタッフの引継ぎがスムーズに進むうちにご売却をお考えになる税理士も多々いらっしゃいます。

税理士事務所の人的不足もあり、クライアントだけでなく、税理士事務所スタッフの継続を条件に購入を希望する事務所が多く、またスタッフの離脱がM&Aを進める上で買い手側の不安材料とならないよう進める事が重要です。

本記事の執筆者

税理士紹介エージェント 編集部

2012年から10年以上、税理士紹介エージェント を運営し、最適な税理士をご紹介する中で お客様からよく寄せられる疑問や税務に関するコツ、最新の税制改正情報など、幅広く税に関するお役立ち情報を提供しています。

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